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仲正昌樹『なぜ「話」は通じないのか――コミュニケーションの不自由論』


著者: 仲正 昌樹
タイトル: なぜ「話」は通じないのか―コミュニケーションの不自由論

最近書店に行くと「話が通じない」系の書籍が多く目に入る。Amazonで「話+通じない」などで検索してみると、



著者: 中西 雅之
タイトル: なぜあの人とは話が通じないのか? 非・論理コミュニケーション

著者: 山田 ズーニー
タイトル: あなたの話はなぜ「通じない」のか
著者: 田村 秀行
タイトル: だから、その日本語では通じない
著者: 加藤 諦三
タイトル: 「話が通じない相手」にイライラしない心理学―対人関係のストレスをとるヒント
著者: 森瀬 茂
タイトル: 話し言葉のルールブック―誠意だけで話は通じない
著者: 西本 鶏介
タイトル: 話が通じない人に一言

とか


とにかくたくさんある。中には最近のものではなく絶版のものもあるけれど、書店には「話が通じない」コーナーとでもいうべき領域ができつつあり、現在それだけニーズがあるということだろう。


でまあ、話が通じないのはどうでもいいのだが(通じるわけがないのだから――というより「通じ」という言葉の用法によっていかようにでも問題を設定できるのだから)、去年からブレイクぎみの仲正さんのこの本は抱腹絶倒。面白い。


仲正さんのいう「話は通じない」というのは、ルーマン的な「人間にコミュニケートすることは不可能である」みたいなレベルというよりは、まともな手続きをとれない、合理性に欠けたバカ=「ワン君(パブロフの犬)」が、とにかくコミュニケーションを自己目的化することによって、コミュニケーション・システムの合目的性が破綻させられる、という滑稽な(仲正氏にとっては非常に不愉快な)アリガチ事態のことだ。


仲正さんの場合は講演や研究会などでのありえねー(でもよくある)エピソードを豊富にお持ちなのだが、「悪い聴衆」――「質問タイム」に「自公独裁政権による…」とか脈絡なく発言する人――と「人格者」のやりとりは笑える。

[引用開始]
「人格者」の方は、「本質的な質問」に対して「答える」ふりをして、自分も実は(そこらへんの薄っぺらで小賢しい知識人とは違って)そうした「本質的な問題」について思い悩んでいるんですよ、というポーズを取ってみせたり、「質問」に便乗して、「その質問にも関連しているのですが……」、という調子でさきほど「言いたりなかった」ことを滔々と語ってみせたりする。それでは、「悪い聴衆」がはぐらかされたと思って、余計に憤慨しそうに思えるのだが、必ずしもそうではない。「本質的な質問」だと認めてもらうと、理屈の上では何の関連もない「答え」であっても、結構満足してしまうことがある。この人たちはお互いに何を求めているのだ!
[引用終了]

仲正さんの罵倒芸はすばらしいね。ちなみに渋谷のブックファーストでは特集が組まれていました(仲正氏関連本がまとめてゲトできます)。

会計学入門一歩前



著者: 山田 真哉
タイトル: さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学


『女子大生会計士の事件簿』(読んだことない)の作者による「会計学」入門。複式簿記というのは14世紀のイタリアで発明され、日本には明治期に、福沢諭吉によって輸入された……というようなことが簿記検定の教科書の最初の方には必ず書いてあるものだけれど、そういったことはすっとばして、なおかつ数字の動きもすっとばして、身近なエピソードを用いて「会計学」のエッセンスを紹介するという主旨。たとえばタイトルにある「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」という問題は、

[1]さおだけという商品にそもそもの需要(ニーズ)がない
[2]わざわざさおだけ屋から買うメリットもない

というふたつの問題を孕んでいる。以上の問題点から、「ゴーイング・コンサーン」(企業は継続することを大前提とする)にかなう商売であるとは思われず、さおだけ屋の存在は、大きな謎として立ち現われてくるのだ。
筆者は2つの仮説を立てる。

(1)さおだけ屋は、実は売り上げが高い
(2)さおだけ屋は、実は仕入れの費用が低い

これらの仮説が検証されていくのだけれど、仮説1はほとんど詐欺(いや、文字通りそういう結論なんだよ)としても、仮説2の検証は、ああ、なるほど、と思わせる。といってもすごい結論ではなくて、どちらかというと、はあ、そうですか、みたいなものなのだけど、金儲けってじつはそういう「はあ、そうですか」みたいなシンプルな原則にしかもとづいていないのだ、ということの啓蒙として機能する。とくに冒頭のこの章、「1000円のモノを500円で買うのと、101万円のモノを100万円で買うのと、どちらが得か」という問題(これは後者が得なのだそうだ。費用削減は絶対額で考えなければならない)や、「情報源に偏りがある場合、費用対効果はわからない」というちょっと社会学的なハナシ(効用関数の合成〔の不可能性〕みたいなハナシに似てない?)が面白いと思った。

公認会計士 山田真哉工房 ~『女子大生会計士の事件簿』公式サイト~



著者: 山田 真哉
タイトル: 女子大生会計士の事件簿〈DX.1〉ベンチャーの王子様


著者: 山田 真哉
タイトル: 女子大生会計士の事件簿 (DX.2)